980円の海鮮丼

980円の海鮮丼
娘が放っておいた岩手グルメ雑誌から、女房が田野畑村の海鮮丼を見つけた。
今や漁港がある所には必ず、ご当地海鮮丼があるが、女房の目を引いたのは980円という値段である。
貧乏職人の女房を30年もやっていると、先に値段から見ていく習性は、誰のせいでもなく、言うほどに侘しくなるだけである。
八戸から2時間、連休にもボランティアに追われっぱなしの身には、格好の罪滅ぼしだ。
という訳で、千葉から里帰りの娘と家族4人で、海鮮丼ドライブに出かけた。
ナビに導かれて着いた店は、これまでにも何度となく通った所だが、この店に気がついた事はなかった。
北川食堂という古びた名前からも、外観からも特に目立つものは何もない。
空席を見つけ座ったが、お茶も水もセルフサービス、壁に品書きが張ってあり、注文が決まったら、テーブルのブザーで呼ぶという、徹底した省エネサービスである。
それでもグルメ雑誌に掲載されているだけあって、客は結構入っている。
私達はお目当ての、日替わり海鮮丼を注文したが、店員さんの接客がとても気持ちがいい。
マニュアルに忠実な薄っぺらの接客でもなく、高級レストランのそつのない接客でもない、どこから来るのか解らないが、心の通う気持ちのいい接客である。
接客に感心している間に、運ばれてきた海鮮丼は、本当に980円でいいの?というほどの味と質であった。
私たちだって浜育ちで、中学ぐらいまでは魚介類は買って食べるものでなく、貰って食べるものであった。
そのくらい魚介類は食べてきた、貧乏人と言えども、舌には自信を持っている。
唸る、唸る、4人とも唸った。
丼に乗った9品のハーモニー、ハーモニーどころではない、これは和である。
イクラはどこにでもある、だがこんなおいしいイクラは食べた事がない。
その外の物も全て違う、感動、感動、感動。
日替わり海鮮という意味は、その日地元で獲れた食材に合わせて、中身を決めるという事だ。
店主は何処かの料亭で修行を積んだ人らしい、しっかりした基礎とこだわりがこの味を作ったのだろう。
素晴らしい職人芸である、そして店員もその意気込みが伝わっているから、自然体で気持ちのいい接客が出来るのだろう。
味も接客も、心の奥深い所から滲み出てきている。
そういう意味で、この店全体が、職人だ。
脱帽。
北川食堂さんの紹介は田野畑村商工会のHPから
http://www.shokokai.or.jp/03/0348411113/index.htm
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